夏場で注意するべき不整脈治療
これから暑くなってくる時期に遭遇する可能性がある心電図を紹介致します。
症例は80代の女性、心房細動で加療中にめまい・息切れで来院。
この心電図分かりますか?
・完全房室ブロック?
・slow VT?
・WPW症候群?
正解は「ピルジカイニド中毒」です。ピルジカイニドはVaughan Williams分類でclassⅠc群に分類されるナトリウム(Na)チャネル遮断薬で心房細動などの上室性不整脈に最も使用される抗不整脈薬の一つです。特徴的なのは尿中未変化体排泄率が80%と高く、Ⅰ群薬の中で最も腎排泄率が高いのが特徴です。クレアチニンクリアランス(Ccr)<50ではCcrに応じて半減期が徐々に延長します。この患者さんは心房細動に対してピルジカイニドを服用しており、外来ではCre 0.55と正常範囲だったのが、夏場の脱水から腎機能障害(Cre 0.90)を来してピルジカイニド中毒を来した症例です。幸い補液による脱水補正で腎機能の改善とともに心電図も正常に回復していきました。
これから暑くなってくる時期、脱水によって腎排泄性薬物が蓄積して中毒を来たす患者さんが突然救急外来を訪れます。よく分からない心電図を見たときは「内服薬を確認する」を心掛けて見ましょう、答えが見つかるかもしれません。また、抗不整脈薬を処方している患者さんでは夏場は特に腎機能と心電図変化に気を付けましょう
