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Dr. RK

PCIの達人。複雑PCIや特殊カテーテルの使い手。診断や治療戦略にもかなり造詣が深く、熱心な教育も好評です。
コードネーム“お師匠様”

過去記事

~慢性腎臓病(CKD)患者への冠動脈治療 (1)~

 今回は慢性腎臓病(CKD)患者への冠動脈治療について解説する。 本患者さんの治療は全て当院若手循環器医が担当し、施行している。
 症例は60歳台の男性。うっ血性心不全にて入院となった。もともと1年前に他院での整形外科術前検査にて左回旋枝(LCX)末梢に90%、右冠動脈(RCA)近位部に90%病変を認めていた。階段昇降など強労作では胸部症状があるものの、軽労作では出現しないこと、CKDの進行があることから保存的に観察されていた。
 今回は2週間前から増悪する呼吸困難にて近医受診。胸部レントゲンでは肺うっ血を認め、血液検査ではBNP 1968 pg/ml, Cr 4.99 mg/mlで入院加療を開始した。心臓超音波検査では下後壁の運動低下によりEF 46%程度であった。入院時のトロポニンI 19295.8 pg/ml, CK 410 IU/Lと上昇しており、虚血イベントが心不全増悪のトリガーとなった可能性も考えられた。 このため病状安定後に冠動脈造影検査(CAG)を施行する方針となった。
 本患者のようにCKD患者に併発する冠動脈疾患の場合は注意が必要となる。CAGでは造影剤を使用する必要があるが、CKD患者にとって造影剤使用は予後増悪のリスクとなるからである。
 造影剤腎症(CIN)は、造影剤投与後72時間以内に血清クレアチニン(Cr)値が前値より0.5 mg/ml以上、または25%以上増加した場合と定義される。CINの発症リスクや透析リスクは事前に推定が可能(腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2018参照)であり、本患者では心不全を来していること、病状安定後のCr 4.22 mg/dl (eGFR 12.2)であることからリスクスコアは11点となり、CIN発症リスクは26.1%、透析リスクは1.09%と推測された。
 1年前にCIN発症リスクを懸念し、冠動脈治療を断念したのも頷ける病態である。しかし今回、症状は増悪、急性冠症候群による虚血性心筋症増悪と判断したので、冠動脈精査、治療の方針となった。CAGなどの侵襲的造影ではCKD Grade3a-5の患者は予防策を講ずることが推奨されており、本患者はGrade5のため予防策を行って検査治療の方針となった。
 現時点で推奨される予防策は大きく2つである。①ヨード造影剤の使用量は必要最小限とする、②造影剤の投与前と投与後に6-12時間、0.9%生理食塩水1 ml/kg/hrを輸液する。
 本患者は体重75kgであるが、心不全症例では輸液量は減らす必要があるため、担当医の判断で前日は40 ml/h,当日からCAG後は80 ml/hでの生理食塩水投与を行った。
 また1回の造影剤量を減らすことも必要であり、かつ頻回の造影検査もCIN発症リスクを高めるため1-2週間あけての検査治療が望ましいとされる。本症例もCAGと経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は間隔をあけて施行する方針とした。
 十分な準備と説明の下、CAGを施行し、元々指摘されていたLCX末梢及びRCA近位部の病変が99%へ進行していることを確認した。




左前下行枝は幸い中等度狭窄のみであった。

 造影剤量は想定より使用してしまったが幸い48時間後のCr値は4.31 mg/dlとCIN発症せずに経過できた。造影剤使用量と減量のポイントは次回上記病変の治療についての際に併せて解説する。
 当院ではCKD患者のCAGやPCIはリスクが高いため不必要あればできる限り別の検査治療を考慮している。しかし、検査が必要と判断された場合はリスク発生率を考慮し、予防策を講じ、これらを十分に患者さん、ご家族へ説明した上で、施行可能であると考え、施行している。

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