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Dr. RK

PCIの達人。複雑PCIや特殊カテーテルの使い手。診断や治療戦略にもかなり造詣が深く、熱心な教育も好評です。
コードネーム“お師匠様”

過去記事

~慢性腎臓病(CKD)患者への冠動脈治療 (2)~

 第2回は前回に続いて慢性腎臓病(CKD)患者への冠動脈治療について解説する。

 症例は60歳台の男性。虚血性心筋症による慢性心不全の急性増悪にて入院加療中の患者である。 CAGにて以前より進行している左回旋枝(LCX)末梢病変99%、右冠動脈(RCA)近位部に99%病変を確認した。 この虚血がトリガーとなって心不全増悪した可能性が否定できないため、冠動脈治療を施行する方針となった。

 本患者のようにCKD患者に併発する冠動脈疾患の治療は注意が必要となる。 まず、繰り返し造影剤使用を避けるためCAGから十分に時間をおいてPCIを計画した。 通常72時間以上は少なくとも間隔をおくべきとされており、今回はCAG終了後1週間あけてLCXのPCIを計画した。

 現時点で造影剤腎症(CIN)の予防策は大きく2つが推奨される(腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2018)。
①ヨード造影剤の使用量は必要最小限とする
②造影剤の投与前と投与後に6-12時間、0.9%生理食塩水1ml/kg/hを輸液する

①ヨード造影剤の使用量については、CAGでもPCIでも使用量の考えは同様である。 造影剤投与量が増加すると、CIN発症リスクが高くなる。特にCKD患者では、 最大投与量を超えて造影剤を投与するとCINの発症率が有意に上昇することが報告されており使用量を制限することは重要である。 古典的には、最大造影剤用量=5×体重(kg) /Cr(mg/dl)(最大300mL)の式が知られている。この報告では、 CIN 発症率は最大造影剤投与量を超えた患者では21%と、最大投与量以内の患者の発症率2%より有意に高かった(Am J Med 1989;86:649-652)とされ、 本邦でも広く使用されている。最近になり、SCrやeGFRに基づいて造影剤最大投与量を設定する報告が増えている。 eGFRと造影剤投与量の比が1未満としたほうがよい(Acta Radiol 2008;49:658-66)との報告や、 造影剤量/SCrが2を超えるとCINの発症、透析の必要が有意に増加するとの報告(J Am Coll Cardiol 2011;58:907-914)もある。
②補液については、今回70kg台の体重であり、通常ならばPCIの12時間前から70ml/h程度の補液を行うべきであるが、 EF40%台の心不全を考慮し、40ml/hの補液を12時間前から施行した。 心不全患者においては臨機応変に補液量を変更することがガイドラインに示されているためである。 当日は60ml/hの補液としてPCI施行し、術後も12時間以上の補液を継続した。

 ガイドラインでは十分な補液の有無に関わらず、炭酸水素ナトリウム液を造影開始1時間前から3ml/kg/hで輸液し、 造影終了後は1ml/kg/hで6時間輸液することも推奨されている。当院では現在のところ施行していないが、 筆者の自施設では特に十分な補液が間に合わない緊急症例などでは積極的に使用している。 ただし心不全患者に対する過剰輸液には留意する必要がある。 過去にはNアセチルシステイン、hANP、アスコルビン酸、スタチンなどがCIN発症予防に有用な可能性が指摘されたことがあるが、 現在のガイドラインでは推奨されておらず、筆者も使用していない。

 十分な準備の元、本症例は造影剤を極力少なくしてPCIを施行した。 造影剤腎症予防のためのPCIの技術的な注意点は次回解説する。 本症例は事前に施行したCAG画像を参考に、同じ角度、同じ距離から造影なしでGuiding Catheter挿入、Guidewire挿入を行った。 事前の造影はマイクロカテーテルを使用して最小限とし(Fig.1)、 手技は血管内超音波(IVUS)を積極的に用いて行った。病変部にステントを留置(Fig.2)し、 最終確認はIVUS及びマイクロカテーテルからの造影にて施行(Fig.3)した。







 実際の治療は当院の若手医師がすべて行い、筆者は指導的術者として技術指導のみ行った。 治療は予定通り約10mlの造影剤使用で完了し、eGFR値も超えない少量で終了しえた。 術前のSCr 4.09 mg/dl (eGFR 12.6 ml/min/1.73m2)であったが治療2日後にはSCr 4.16 mg/dlと有意な上昇は認めずCINは発症しなかった。 適切な知識、準備の下、適切な治療を行うことで高度腎機能障害の患者さんにおいてもその増悪を来すことなく造影治療が可能である一例を紹介した。 次回は残存する狭窄病変の治療とPCIの技術上の注意点を解説する。

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