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Dr. RK

PCIの達人。複雑PCIや特殊カテーテルの使い手。診断や治療戦略にもかなり造詣が深く、熱心な教育も好評です。
コードネーム“お師匠様”

過去記事

~慢性腎臓病(CKD)患者への冠動脈治療 (3)~

 第3回は第1回より続く慢性腎臓病(CKD)患者への冠動脈治療についての最終回である。
60歳台の虚血性心筋症による慢性心不全の男性患者が同急性増悪にて入院加療した。 CAGにて以前より進行している左回旋枝(LCX)末梢病変99%、右冠動脈(RCA)近位部に99%病変を確認し、 虚血解除のため左回旋枝治療を施行した。
今回は右冠動脈近位の99%病変に対するPCIを解説する。

 前回治療同様、繰り返し造影剤使用を避けるため治療から1週間後にPCIを計画した。 前回治療翌日のSCr値は3.86mg/dlであったが、2日後は4.16mg/dlと上昇を認めた。 術前後に十分なhydrationを行っており、4日後には3.62mg/dlまで改善した。
改善後RCA近位部99%病変への治療を行った。前回同様事前に施行したCAG画像を参考に、 同じ角度、同じ距離から造影なしでGuiding Catheter挿入を行った。 治療前の造影はマイクロカテーテルを使用して最小限とした。
当初より病変通過が困難であることが予想されることからMicrocatheterを併用してGuidewire挿入を行った。 しかし通常のsoft wireでは通過困難なため、tapered soft wire (XT-R)を用いて病変通過に成功した(Figure1)。 Microcatheterを挿入しようと試みたが、狭窄が強く、通過困難なためKusabiを用いて一旦Microcatheterを抜去した。



 小径バルーンは通過可能であったので、これによる拡張を行った後、Microcatheterが通過可能となった。 末梢に進めた後、tapered soft wireを通常のsoft wireへ変更。血管内超音波(IVUS)による観察を行った。 本来ならばバルーン拡張後にperforationの有無や末梢造影遅延の有無などを確認のため、造影にて確認するところであるが、 本症例は腎機能低下症例のため、心電図変化がないこと、症状がないこと、IVUSにて末梢においては通常の血球エコーが確認され、 病変前後においては悪性の解離等異常所見がないことを確認することで造影の代用とした。
腎機能低下症例のPCIで造影剤を制限するためIVUS所見を十分に利用することが肝要である。
 更に本症例では事前の造影でも予想していた通り、び漫性の病変でステントの留置部位が決め難い状況であった。 再狭窄リスクの低減のため、プラーク容積が<50%以下のところをステント端とするべく、IVUSにて観察を行った。 現在の機械走査式IVUSは、一度透視化で冠動脈に入れてしまえば、 後はトランスデューサーを前後することで安全にステント留置部及び病変部の観察が可能である。 またステント径や長もほぼ決定することができる。本症例でもIVUSで十分に観察した後、 ステント留置部位を描出した部分で透視画像を記録する、IVUSマーキングを行った。
 ステント留置後は、バルーン拡張後同様、患者さんの状態やIVUS所見で問題のないことを確認した。 末梢の状況は全く問題がなかったが、RCA入口部近くで高度狭窄病変がもう一つあることが確認された。 やむを得ず、もう1本のステントで治療の方針としたが、問題は造影せずにRCA入口部にどうステント留置するかである。
 今回はFigure2のようにダミーワイヤーを大動脈内に留置した。 これによりガイディングカテーテルが冠動脈に深く入ることが出来なくなる。 この状態でIVUSを用いて、RCA入口部のステントを留置したい場所を描出する。 描出できたが分離の良い角度で透視を保存し、マーキングした(Figure2)。 本症例はRCA入口部の石灰化が良い目標となったのでIVUSによるマーキングを行うことが比較的容易であった。 本症例ではこれを活用することで造影剤を1ccも使用することなく、入口部丁度にステント留置を行うことができた。
最終確認もIVUSを用いて行い、問題のないことを確認した。び漫性病変に長いステント2本を留置しているので、 本症例では希釈した造影剤で最終造影を行い(Figure3)、合併症のないことを確認して終了した。
合計8mlの造影剤を使用した。





 本症例も実際の治療は当院の若手医師がすべて行い、筆者は指導的術者として技術指導のみ行った。 今回の治療2日後にはCr 3.32mg/dlと有意な上昇は認めずCINは発症しなかった。
今回を含む3回のシリーズでは適切な知識、準備の下、適切な手順で治療を行うことで高度腎機能障害の患者さんにおいても その増悪を来すことなく造影治療が可能である一例を紹介した。勿論、どんなに準備を行い、適切な治療を行っても、 造影剤を使用する以上は腎不全の増悪リスクは存在するため、常に増悪する可能性があると考えてフォローすることが 重要であることは言うまでもない。


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