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Dr. SN

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過去記事

 二尖弁(BAV)へのTAVIは本当に大丈夫?

 かつては何かと手ごわいイメージのあった大動脈二尖弁(Bicuspid aortic Valve: BAV)をもった大動脈弁狭窄(Aortic Stenosis: AS)患者さんへの経カテーテル大動脈弁治療(Transcatheter Aortic Valve Intervention/Replacement: TAVI/TAVR)ですが、最近になり思いのほか成績が良いことがわかってきました。
 まず成績云々の前に用語の整理ですが、BAVとは決してType 0(先天性のpurely BAV)だけを指しているわけではありません。むしろTAVIの対象になる高齢者ではType1(one raphe)が過半数を占め、次にType 0、最後にType 2(two raphes)が続きます。BAVの分類に関しては以下の文献にありますように、Anlagen (ドイツ語で原基の意味)の数などの確認が必要ですからエコーだけでなくCTも併用して判断しなければいけません。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022522307002371?via%3Dihub

 BAVはcuspがいびつで不均一な形態をしているだけでなく、弁葉やrapheの強い石灰化などが影響して、TAVI弁が十分に開かず、弁周囲逆流(ParaValvular Leak: PVL)、残存狭窄、追加の人工弁植え込みの必要性、ないしは弁輪破裂などによる外科手術への移行等の合併が多いといった問題があると認識されていました。ところが2017年のBicuspid AS TAVR registryからの報告(多施設共同、BAV群 n = 576, 大動脈三尖弁群 n = 5876からpropensity score matching、最終的に両群 n = 546)では、BAV患者に対するTAVI後のmortalityは大動脈三尖弁患者に対するそれと同等であることが示されました。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0735109717360412?via%3Dihub

 中でも特筆すべきはNew-Generation Devices (Sapien 3 (Edwards Lifesciences)/Lotus (Boston Scientific)/Evolut R (Medtronic))に絞れば、mortalityだけでなく、上述のいくつものBAV患者に対するTAVIの問題点も克服されていました。従来は適切な弁口面積と許容範囲のPVLはtrade-offと考えられていました。この難問に対してSapien 3は石灰化等に局所的な圧がかかりにくいステントデザインに改良、さらにアウタースカートが付いたことで弁口面積の確保とPVLの低減をなしえました。Evolut Rも(シーリングスカートが搭載された後発のEvolut Proとともに)壁と広い接触面積が得られるデザインに改良されたことでPVLの低減を獲得、そしてなにより複数回リキャプチャーして適切な留置位置に調整できることが大きな改善点です。

 BAVに対するTAVIにおいてはどのように人工弁が展開されるかのイメージをチームのみんなで前もって共有していることが大事だと思います。上行大動脈は拡大して“寝ている”ことが多いので、カテーテルのシャフトの挙動も結構トリッキーです。弁葉やrapheのゴツイ石灰化がどのように動くかに関しては、最終的にpre-BAV(pre-Balloon Aortic Valvuloplasty、略語が紛らわしくてスミマセン)である程度シミュレーションすることも可能です。Balloon-expandableタイプ(Sapien)か、self-expandableタイプ(Evolut)か、どちらのデバイスが良いかはいつも悩ましいところです。当院では当該患者さんの解剖学的・血行動態的特徴(弁輪の大きさ、弁輪破裂・大動脈基部損傷のリスク、術後大動脈弁逆流による心不全のリスク、上行大動脈の形態など)を事前に列挙して、心臓血管外科のDr.AY先生たちと良く話し合って決めています。
 従来外科治療のハイリスクAS患者さんだけに対する治療であったTAVIですが、近年はローリスク患者、さらにはBAVと次々とその適応を拡大しています。この勢いで現場はますます前のめりになっちゃいがちですが、チェックポイントはかなり多いので、毎回risk vs benefitの議論を尽くして方針を立てていくことが大事と思います。

BAV