構造的心疾患 (Structural Heart Disease: SHD)

[脳塞栓症]

(左心耳閉鎖術や卵円孔開存閉鎖術など)

循環器疾患に伴う脳塞栓症

脳梗塞の成因としては、アテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞などのほかに循環器疾患に伴う脳塞栓が挙げられます。当院ではこのような循環器・脳神経、双方の領域にまたがる病態を循環器および脳神経に係る複数の専門家で構成されるBrain-Heart Teamで協議して病態整理・治療方針決定を行っています。

脳塞栓症の原因として特に循環器領域で気をつけなくてはいけない疾患は①卵円孔開存、②左心耳(左房)内血栓、および③左室内血栓です。

脳塞栓症の主な原因として以下の循環器疾患が注目されています。①卵円孔開存②左心耳(左房)内血栓③左室内血栓

左心耳(左房)内血栓・左室内血栓

心房細動や心不全(心室瘤)に伴う心内血栓症は脳塞栓症の重要な原因疾患です。その中でも(非弁膜症性)心房細動に伴う左心耳由来血栓の脳塞栓症は、適切な経口抗凝固薬で予防できることがほとんどです。心房細動に伴い脳塞栓症を発症するリスクは患者個々で異なり、塞栓症の低リスクでアブレーション(※アブレーションにジャンプしてください)により心房細動から正常の調律(洞調律)に回復できれば経口抗凝固薬を中止できることもあります。

一方で、脳塞栓症発症リスクが高いものの、出血するリスクが高いため経口抗凝固薬の継続が困難と判断される非弁膜症性心房細動の方には、外科的左心耳切除術やカテーテルを用いた左心耳閉鎖(Left Atrial Appendage Occlusion:LAAO)が適用できます。本邦ではWatchmanデバイス(Boston Scientific社)が使用できます。当院では事前にCTや経食道エコー等の画像をよく評価して、どの治療に向いているか協議しています。

経カテーテル的左心耳閉鎖

卵円孔開存

脳梗塞の原因が断定できない脳梗塞は暫定的に潜因性脳梗塞(cryptogenic stroke)、また塞栓症であれば塞栓源不明脳塞栓症(ESUS: Embolic Stroke of Undetermined Source)と呼ばれます。その中で卵円孔開存(胎児循環で必要だった心房間の交通が生後も開存している状態)は非常に重要な疾患です。卵円孔開存を経由して脳塞栓症が起こる病態(奇異性脳塞栓症)は適切に閉鎖すれば脳塞栓症の再発予防が可能ですが、卵円孔は健常者でも1/4程度で開存しているため、”卵円孔開存がただ改善している”だけでは治療の対象になりません。

脳塞栓症の状態、年齢やその他の併存疾患、あるいは卵円孔改善の形態そのものから、“卵円孔開存の関与があり得る潜因性脳梗塞”に対して卵円孔閉鎖術を行い脳塞栓症の再発予防を行います。カテーテルを用いた経皮的卵円孔閉鎖術が可能であり、本邦ではAMPLATZER PFOオクルーダー(Abbott Medical)が使用可能です。当院では心腔内エコー(IntraCardiac Echocardiography: ICE)を用いて局所麻酔下で治療を行っています。

経カテーテル的左心耳閉鎖(Watchmanデバイス)