構造的心疾患 (Structural Heart Disease: SHD)

[僧帽弁閉鎖不全]

僧帽弁閉鎖不全とは

僧帽弁閉鎖不全(Mitral Regurgitation:MR)とは、僧帽弁の閉鎖が不十分であるため左心室から左心房への血液が逆流する弁膜症で、僧帽弁逆流とも呼ばれます。MRが軽度であればほとんどは問題ありませんが、逆流量が多いと、心不全、肺高血圧、あるいは心房細動といった病態を惹起します。またMRは心不全の結果として発生することもあり、心不全とMRはお互いに悪影響を及ぼすこともあります。

僧帽弁閉鎖不全(逆流)は僧帽弁や弁周囲の形態的な異常や左心室の機能低下により起こります

僧帽弁閉鎖不全に対する治療

急性MRと慢性MRで治療方針は異なります。急性MRでは緊急手術も検討されます。慢性MRは僧帽弁や弁周囲組織の形態の異常や変性が主因である病態(degenerative MR:DMR)と心不全が原因で二次的に発生した病態(functional MR:FMR)に分けられますが、両者の切り分けは困難なことがしばしばあります。形態の異常が軽度であれば抗心不全療法などの薬物治療によりある程度の病態の改善が期待されます。

しかしながら薬物治療の効果が十分発揮できず、弁そのものに対する治療が必要な場合もよく見られます。その場合、外科的には僧帽弁形成術(Mitral Valve Repair)や僧帽弁置換術(Mitral Valve Replacement)が選択されます。高齢者や進行した心不全などの理由で手術リスクが高い場合は、カテーテルを用いた経皮的僧帽弁修復術(Transcatheter Mitral Valve Repair, TMVr)が選択されることがあり、本邦ではMitra-Clip(Abbott medical社)が使用可能です。外科治療あるいはカテーテル治療いずれが向いているかに関して、当院では心エコーの専門家医などを含めた複数の医師や心臓血管外科を含めた複数の診療科で構成されるハートチームで治療方針が協議されます。

僧帽弁閉鎖不全
経皮的僧帽弁修復術(Mitra-Clip)後